抗生物質とは何か?
抗生物質は微生物が生産する物質であり、他の微生物の機能や増殖を阻害する物質です。
1982年に青カビから発見されたペニシリンが人類初の抗生物質です。
現在では実際に約70種類が使われており、天然成分由来のものは5,000種類以上あると言われており、合成の抗生物質も約80種類が利用されています。
抗生物質は細菌に作用するものであり、ウイルスに対しては効果がありません。
微生物の機能や増殖を阻害するのが抗生物質ですが、その作用の方法によって以下の5つに分けられます。
・細胞壁を破壊して細胞を殺す
これは人体への毒性が弱い抗生物質です。
・たんぱく質の合成を阻害する
細菌は活動したり分裂したりするのにたんぱく質が必要であり、たんぱく質を作れないようにします。
これはたんぱく質を作る際に必要なリボゾームという成分に作用して、たんぱく質の生成を阻害します。
・DNAの合成を阻害して細菌を殺す
・DNA合成に必要な葉酸という物質の生成を阻害して細菌を殺す
・細胞膜の働きを狂わせ、必要な物質を取り入れ排出する機能を阻害し細菌を殺す
抗生物質は上記の5つのうちどれか1つの働きをします。
その働きによって細菌の活動を停止させて殺すのです。
抗生物質は細菌にしか効果がありませんが、中には抗ウイルス剤というウイルスに効果のある抗生物質も存在します。
参考 : 抗生物質の種類
抗生物質と耐性菌
抗生物質は、口から摂取したり注射したり塗ったり点眼して使用します。
抗生物質も薬の一種ですから副作用はあります。
それは体の常在菌のバランスを崩し、それによって副作用が表れ、下痢や痙攣やアナフィラキシーショックなどの症状が起こります。
また抗生物質は他の薬と使用すると効果が薄れることもあります。
抗生物質は出来た当初は魔法の薬のように取り上げられ、どんな病も治るような錯覚を起こす人もいました。
しかし抗生物質を使うと耐性菌が出てくるという問題があります。
これはある種の抗生物質に耐性をもった細菌のことであり、そのような細菌には、もうその抗生物質は効果が無くなります。
それではそのような細菌を殺すためにはどうするかというと、効果のある新しい抗生物質を探したり合成して作るのです。
有名な耐性菌としてはバンコマイシン耐性菌やメチシリン耐性菌があります。
このような耐性菌が出れば、それに対応して新しい抗生物質を作ります。
しかし、その新しい抗生物質もいずれは耐性のある細菌が登場し、人と病原菌はいたちごっこをしている状態です。
細菌というのはその繁殖スピードは人間と比べものにならないぐらい早く、1日で10の8乗倍にも増えます。
これだけ凄い数の細菌が増殖するので、いずれはその中に突然変異によって抗生物質に耐性のある細菌も表れるのです。
また細菌の遺伝情報は他の細菌にも簡単に移りやすく、他の種類の細菌にも遺伝情報は簡単に移り、このために耐性菌が出来やすいのです。